の病、錯覚?

幸村と仁王が別れたらしい。
そんな噂が流れて、俺的にはラッキー…な訳あるか!
心の隅でその噂を信じんな!って言ってる俺もいたけど、確かに信じようとしている俺も居たから俺はその警告を無視した。

アイツらが付き合う前から俺は知ってる。
どんなに2人がお互いを愛しく思い合っているか。
傍でずっと見て来たんだ。
近くで見てたからこそ…
アイツらがお互いに見えない部分を知ることも出来る。
それに幸村はきっと勘違いをしている。

俺が仁王の奴を好きだと、そう思ってんだろーな。
アイツ、他人が自分に向ける感情に対して臆病で鈍感だから。


「俺が好きなのはお前だ、っーの。何遍も言ってるだろぃ」


確かに仁王と一緒に居るのは多いが、俺が好きなのはお前なんだ。
仁王の傍にいるとお前の視線は俺に注がれるだろ?
だから俺は奴の傍に居るっーの。
けどお前は鈍感だから気付かない。
ってか俺もそんな風にしか幸村の視線に入ろうとしない。
それが悪いのかも知れない。

アイツらの仲を引き裂きたいだとか、幸村を俺のモノにしたいだとか、そんな風に思ってる訳じゃなくて。
寧ろそんなこと出来るとは思ってねーんだって、俺は。
お前らの仲は俺が誰よりも知ってんだから、さ。

噂が流れた、翌日。
アイツらは仲良く2人で帰宅してっし。
普段は手なんか繋がない癖にそれまでして。
やっぱ噂は所詮、噂か。

2人の後ろ姿を眺めてっと柳がにょきっ、って脇から出て来た。
気配消して登場すんなっーの!


「別れたらしいぞ、あの2人」

「は?」

「そしてまた、付き合うことになったらしい」

「何だ、そりゃ」


それだけ言うと柳はどっかに消えた。
別れて、付き合って。
また別れて付き合って。

何度別れても結局は2人で居ることを選ぶんだな、お前ら。
そんな2人が羨ましいと、そう思った。
もしかしたら俺は仁王の隣に居る幸村が好きなのかも知れない。

だって奴の隣で笑う幸村の笑顔は余りにも綺麗で…
俺の頬は緩むから。






2006.05.14