例えば、この白い手が自分以外の他の他人に伸び
その人間の頬を撫でようものならば
俺はきっとソイツを睨み、脅かすだろう
白い腕の持ち主がこちらを向いた時には
俺は元の顔に戻っているに違いない

どうして気付かない?

この焼けるような衝動は
いつからか…テニスに現れるようにもなった
それに気付いたのも、白い腕の持ち主だ


「どうしたんだ、仁王」

「何がと」

「最近のお前のテニスは荒い」

「荒いといけんのかのぉ」

「お前らしさが消えてる。何か理由があるのか?」

「…別に、ないぜよ」

「仁王。嘘をつくならもっと鍛えた方がいい。
 今のお前は詐欺師でもペテン師でもない」


そう
今の俺は恋に溺れたピエロ


「柳生と喧嘩でもしたのなら、早く仲直りしておいで」


微笑む幸村の顔が
勘違いしている白い腕の持ち主が
ふいに憎らしくなった(可愛さ余って憎さ百倍)
腕で引っ張り強引に口付けしてやった


「理由は幸村の所為じゃけん。…幸村が解消しとくれるか?」


驚いた顔の幸村を押し倒し
白い、憎らしい程に白いその腕を縛り
身体も拘束して無理矢理に抱いた

何度も何度も
自分の思いをぶつけるように…抱いた

引き攣る身体 声 流れる涙 白濁の液
何もかも…どうでもよくなって
痛がり涙を流す幸村を汚した

気付いたのは幸村が部室を出て行った時
ふと…気付いたんだ

幸 村 は 対 抗 し な か っ た


「…何故じゃ?」


意味が解らず混乱した、冬のある日






2005.03.04