035:感傷癖 | |
Sentimentalism どんな時に使うべき言葉なのか 未だに理解出来ない ただ、このまま感情に任せて何が悪いのだろうか? 理性と感情の隙間に囁く悪魔の声 それはとても巧妙に俺の心を擽る そして俺は理性を失い 感情のままに心と身体を受け渡す この悪魔の声に ペテン師に‥ 囁くこいつの声に身を委ねたのはいつだったか‥ 自暴自棄になり 自身を傷つけるようになった時だったか‥ もう覚えてない それでも こいつの囁く声は今も聴こえる 聴こえなければ‥俺は不安になるらしい カーテンの隙間から見える景色は綺麗だ 点々と灯りが燈る家々 真っ暗な中に見える仄かな灯りが心を宥めてくれる その灯りのひとつに アイツの光があるかと思うと 此処から駆け出して 今すぐに会いに行きたくなる それすらも出来ない自分の身体 苦笑が零れ 俺は腕を擦る 点滴の痕が残る腕 筋肉が緩みをみせ出す 本当ならばこの時間には起きて朝食を食べて そしてまだ暗い道をテニスバックを背負い歩いて行く 部室に1番に着き 鍵を開け 着替えをはじめる 肌に馴染んだユニフォーム なのに今は‥ ベッドは真っ白 そして自分はパジャマ姿 動くことを許されず 許可されるのは検査の為の移動だけ 何て詰まらないんだ こんな‥ 日常‥は望んでいなかった 俺が望んでいたのは‥ 「邪魔するぜよ」 声が聴こえる 幻聴だろうか‥? 「幸、起きてると?」 「‥仁、王?」 「そう、俺やねぇ。げな目で見ないで。 幽霊でも見てるみたいな顔だねぇ」 「‥そうは言われても‥。何故‥?」 「朝練の前にどうしても幸の顔がみとぉなって」 「‥面会の時間じゃない」 「そうじゃな」 「‥‥‥‥」 「幸は知らん間に随分と泣き虫になったとね」 頭を撫でる手が暖かくて コイツは偽者なんじゃないのかと思った コイツの手が暖かいなんて‥ そんなの‥ 「仁王‥」 「困ったねぇ、どうしたもんか」 「‥暫く‥」 「ん、ええとよ」 不安だったのかも知れない 口に出しては言えないが きっとそうだったんだ‥ だから‥ コイツの腕の中で安心するんだ 部活のことを思い出して テニスのことを考えて 感傷的になってしまったから‥ 仁王の腕の中は暖かかった |
2004.04.22 |