030:いつも望んでいること | |
青空の下で大好きなテニスをする 曇り空の下でべた付くシャツを気にもせずにテニスをする 梅雨の湿気、夏の暑さ、冬の寒さ どんな季節でも、関わるのはテニスだった 高校に進学してもそれは変わらないだろうと そう思っていた 自分の体調の変化に気付くまでは 貧血に微熱が続く日々 おかしいと思い、病院に行けば 何故か繰り返される検査、検査 そして次第に動くことを忘れたかのような手足 医師に宣言された病名は 今の日本では稀有な病気だった それは テニスプレイヤーである自分にとって 選手生命を絶たれたのと一緒だ 死ぬ訳でも無い 治る可能性は高いと医師は言う けれど後遺症が残る場合もあると 死ぬ訳じゃないけれど テニスが出来ないのは 自分の人生を絶たれたのと同意語だった 呼吸困難 痺れる手足 ぼやける視界 「誰だ?」 「目も、見えんと?」 「否、ぼやけるだけだ」 「それは疲れるとね」 「だから目を瞑っていた方がラクなんだ」 「なら、俺が何をやってもおまんさんには分からんとね」 「…そう、だな」 目を擦り 相手を確認しようする その手を相手の腕が遮り捕まれる 掴まれた腕は痛かったが 唇に落ちたキスは痛くなかった 目を開けた時に 自分がコートに立つ時に いつもお前の姿が目の端に映っているように 願いを込めて 空いていた腕を首に廻し 長く伸びた後ろ毛を引っ張った |
2004.04.18 |