目の前で人懐っこい笑顔をする山本武を迎えるのは
これで何度目だったか、頭の隅で考えてみる
思えば今月に入って既に両手の数は超えていた
その時点で無意味だったと、その思考を霧散させた


「僕の誕生日はとっくに過ぎた」

「へっ?」


何を勘違いしたのか、山本武がプレゼントを寄越して来た
前回、応接室を訪れた理由は怪我をしたからだった気がする
君の目に此処が保健室に見えるなら、医者に行けと咬み殺した
今回はどんな企てか知らないが、無理矢理に手渡されたソレを
(ご丁寧に青いリボンが巻かれた小さな箱だった)
無造作に暴けば中身は何てこともない、和菓子だった
問い質せば誕生日プレゼントだと笑って言う


「可笑しなことを言うね、君」

「だってヒバリの誕生日だろ?」


そんな間抜けな言葉を聞き、冒頭の台詞を発した訳だ
学校がある今日が僕の誕生日な訳が無い


「誰から聞いたんだか知らないけど、僕の誕生日は今日じゃない」

「そっか…じゃあディーノさんも間違って覚えてるのな」


更に可笑しなことをこの男は言う
ディーノは正真正銘、僕の誕生日である五月五日に
抱えきれない程のプレゼントを持って来ていた
僕が受け取ると、本気で思っているあたりあの男は面倒だ

そのディーノが山本に嘘を教えてた
…意味が判らないな


「ともかく。おめでとうな、ヒバリ」


そう言って、満足そうな顔をして踵を返すな
僕の言葉も聞かず自己満足だけ得て君は消える

本当に厄介な人間だよ
僕の心を乱す、厄介な男だ






2008.03.02