Halloween pleasant today. I go into mischief unless I give a cake! I run after you with a knife with the blood |
切り裂き王子は唯一見える口をこれでもかと吊り上げ 血に濡れたナイフ片手にご機嫌な様子で音を奏でる 時計の針が十二時を示し、日付変更したのを見届け 今にもスキップしそうな足取りで、にも関わらず足音は立てず 切り裂き王子はとある部屋へと向かう 普段から愛用するボーダーシャツ姿は ハロウィーンとは無関係だったが、その手には 唯一今日を象徴するジャックランタンを持っていた 「 Trick or treat! 」 目的の部屋、ドアを足で蹴り破る 部屋の主であるスクアーロは 乱入した切り裂き王子に驚くでもなく 彼目掛け飴玉を放り投げた 「それで満足かぁ?」 してやったり顔のスクアーロとは対象的に ベルフェゴールは先程までのご機嫌何処へやら 口をへの字に曲げズカズカと部屋に押し入る 「オマエね。もっと空気読めよな!」 手にしたナイフを枕へ突き刺せば羽が舞い上がる その光景を横目にスクアーロは溜息を吐く 用意しても、しなくとも、自分はこの王子の不興を買うらしい ベッドへ腰掛けたベルフェゴールの髪を撫でれば 小気味良い音をさせ振り払われてしまう 「ベル」 「…なんだよ」 「Trick or treat?」 「は?」 「だから、Trick or treatだ」 「持ってる訳ないじゃん」 「なら悪戯で決まりだなぁ」 口付け迫るスクアーロの顔が近付くのを 満更でもない表情で眺め、そっと瞳を閉じた 濃厚な口付けを堪能したスクアーロが唇を離せば 物足りな気な表情を口だけで表すベルフェゴールに 歳相応の幼さ見付けては安心する この我が侭な王子の行く末を不安に思い ついスクアーロは彼を甘やかしてしまうのだ 恋人と言う立場を差し引いても 彼に普通を与えたいと思ってしまう 「ベル。こっち来い」 「王子に命令?」 「いいから、来い」 ベッドから離れ小さな冷蔵庫から赤い果実を取り出し スクアーロは器用にそれを剥いてゆく 酸味のあるりんごの匂いが部屋を満たす 適当に剥き終え、とある位置にベルフェゴールを誘導すれば そこでりんごを食べろと注文つけるスクアーロに 疑問隠せず首を傾げるが、急かす彼に押され ベルフェゴールはりんごを口に含み食す それを確認したスクアーロが、目の前の布に手を掛ける 布の下から現れたのは等身映す鏡だった 「なんだよ、これ」 「さぁな。美味いかぁ?」 「まぁまぁ」 「そぉか」 鏡にはりんごを食べるベルフェゴールと その彼を背後から抱き締めるスクアーロの姿 ある地域にはハロウィーンの言い伝えが多数存在する そのひとつに、りんごを食べて鏡を見れば 将来の伴侶がその鏡に映し出されるらしい そんな言い伝えがあるのだそうだ らしくない行動に苦笑浮かべるが 腕の中、大人しくりんごを食べるベルフェゴール見れば 偶にはこんな日もいいだろうと結論付け より一層、彼を抱き締める腕に力を入れた |
2007.10.31