花が舞い落ちる 赤‥黄色‥青‥ピンク‥白‥ 全ての花が舞い降りる 弔いの餞として 花は花びらとして 白い着物に舞い落ちる そして 花で覆い尽くされる |
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花葬 | |
何もこんな日に 誰もがそう呟く 何も誕生日に、と 9月12日 それが彼の生まれた日であり 死んだ日となった 彼の両親は泣き崩れた その様子を彼の親友は何処か遠い場所から見ていた 否、傍で見ていた 何故なら彼は棺に1番近い場所に居たのだから 両親と共に 今日が通夜となるだろう 彼に触れられるのは今日限りとなる 彼は両親を宥め、棺と同じ部屋に1人きり 否、2人きり 「こないな姿は、似合わへんなぁ」 (オレだってそう思うってーの。 好きでこんな格好なんじゃないって) 「どないしてやろか。今のこの瞬間が、夢のようや。悪い‥夢や」 (‥そんなの‥オレのほうが、だよ) 「どないしてえぇのか‥分らへんのや」 (何、情けない顔してんだよ!‥ヘタレ侑士め) 「なぁ‥岳人」 (何だよ‥侑士‥) 彼は財布にあった限りの金銭で花を買った これが彼の限界だと言わんばかりに花を買い込んで来た そしてその花を棺に眠る彼へと 花びらを落としていった 白い顔に映える色 それは花の色彩 棺に眠る彼の代わりに 彼に色を与えてくれる 「誕生日に死ぬ馬鹿、お前くらいやで‥」 (くそくそ侑士!うるさいっ) 「何て‥馬鹿や‥」 (バカ言うなよ‥オレだって‥そう、思ってる‥んだから) 紅い華が 彼を彩り 白い肌が 引き立つ 「岳人‥」 (‥‥‥‥‥) 唇に彼は唇を落とした 冷たい唇に 彼が冷たい入れ物に触れている時 彼の身体は入れ物から抜けたモノが 彼の身体を包んでいた それは一枚の絵のようだ 通夜が始まる そして葬式へ 火葬へ 彼には耐えられなかった 「お前だろ。岳人の棺の花は」 「‥‥」 「両親が驚いてたぜ」 「‥さよか」 「あれだけの花。どうしたんだよ」 「財布の中身‥全部使こうてしもうた‥」 「そうかよ。なら俺様もやってやるか」 彼の友人は自分の財布の中身を全て使い切り 儚くなった友人の為に花を買った 彼の友人の財布の中身は意図として知らない どうしたらこんなに花が集まるのか 彼と彼の友人は花を校舎の上 屋上から舞い落とした 彼は花びらだけを 友人は一輪を 他にも人が集まり儚くなった友人を偲んだ 彼が通う学園は 花で埋め尽くされた 彼を祝うはずの花は 弔いの花となった 「‥HAPPY BIRTHDAY‥」 |
2004.09.12