追憶 |
泣いてるの? 侑ちゃんはアトベと恋してた 俺は侑ちゃんに恋してた でも侑ちゃんの恋は終った 侑ちゃんとアトベは恋愛で おれのは恋 でも今日からは恋愛になるんだ 侑ちゃんは今でもアトベが好き 泣いて 泣いて 泣いて 悲しんでる アトベとさよならしたことを でも戻れないことを侑ちゃんは知ってたんだ だから侑ちゃんは泣いてる 大声で 叫ぶように…泣いてる 流れない涙 でも確かに侑ちゃんは泣いてるんだ おれにはわかる だっておれは侑ちゃんに恋してるから 泣いてよ ちゃんと泣いて 涙を流さないで そんなに悲痛な声で叫ばないで 哀しいよね 辛いよね こんなに好きなのに こんなに好きやのに おれと侑ちゃんの思いは一緒 侑ちゃんがアトベを忘れる日はこない だって今でも侑ちゃんはアトベが好きだから また、を望んでるから 来ることはないと知りながら侑ちゃんは「また」を願ってる 無音で叫びながら泣く姿は 月の光の下でも変わらず綺麗だ 侑ちゃんがおれはダイスキ ふたりとも妥協を知らないかのように思えた 少なくともアトベはそうだ いつも「上」を目指してる 自分を高みに 高いアトベの理想 その理想に侑ちゃんは負けちゃった 耐えられなくなったのはアトベ 傷つく侑ちゃんと傷つくアトベ ふたりは好き同志なのに こんなにも叫び、痛みに耐える侑ちゃん おれは侑ちゃんの味方だから だから侑ちゃんを支えたい たとえ侑ちゃんが おれを好きになってくれて でもその瞳と心に アトベの面影や思いが消えなくても おれは侑ちゃんが好き 「愛してた」 それは過去形 侑ちゃんはテニスをやめない テニスは侑ちゃんとアトベの「セカイ」だから 追い求めた理想のひとつだから ふたりはテニスを通して一緒に居る ふたりだけの「永遠」を探すために おれはそれを侑ちゃんの1番の傍で見つめる 誰よりも近い この場所で ダイスキな侑ちゃん この月夜の下で 涙も流せずに叫び続ける そんなアナタが おれはダイスキです ぼくときみのセカイを 一緒に作ってはくれませんか? 眠れない夜は 一緒のベッドで話をしようよ 「…あんな」 「…んー?」 「俺の誕生花の花言葉な、『忍耐』らしいねん」 「うん…」 「せやから俺は大丈夫やで。いつでも耐えられたんやから。 これからかて耐えられるで」 叫び疲れた侑ちゃんはそう言った その疲れた身体をおれは抱き締めた 侑ちゃんの手がおれの背に廻ることは無かったけど 侑ちゃんの手は 確かにおれのシャツの裾を掴んでいた |
2003.07.30 |