もが、キミにしてる
宍戸亮の場合

性格も言動も全てが嫌味でムカつく。
なのに憧れてしまうのは、認めたくないが奴にカリスマがあるから。

結局はあいつを好いて俺が居る。

レギュラー復帰出来たのも、奴の口添えがあったから。
心底、あいつを嫌いになれない理由。
あいつを好きになっちゃまった理由がこれだ。

何事も器用に出来るクセに何処か不器用で。
俺様って言葉が似合うクセに情に厚い。

そんなあいつに、俺は惚れてる(多分…)

慕ってくる後輩。
犬みてぇに傍に擦り寄ってくるデカイ図体の後輩。
どんな感情を持って俺の傍に居るか…分かってる。
分かってるが答えない俺。
答えられない俺。

あいつが俺の誕生日を覚えてた。
それだけで後輩の存在は俺の中から消えちまう。

悪いな、長太郎。
お前には感謝してる。
お前に何度、救われたか知れねぇけどよ…無理だ。

目があいつを追い掛ける。
視線が合えば背ける。
俺らの目が絡むことはねぇ。
それでも俺は、あいつを目の端に捕らえる。

髪が俺以上にサラサラだとか。
太陽の光が苦手だとか。
無理して憎まれ役を買っているだとか。

くだんねー情報ばっかだ、俺が知るお前は。

あいつの視線は常に前を見据える。
目の前にある勝利の為の弛まぬ努力。
俺の存在が目に入るのは、俺が勝利した時だ。
前を見る奴の隣に居る為には勝つしかない。

だから俺は勝ち続けなきゃなんねーんだ。

ダセーが、それしか手段がないんだよ。
他に、お前が俺を見る方法を知らない。

部長なんだ、誕生日くらい知ってて当然。
だけどあいつが、跡部が俺の産まれた日を知っていた。
たったそれだけで、俺はまた強くなれる気がした。

あいつが誰を見てようが、関係ない。
俺は俺の道を行くだけだからな。

あいつが俺に気付いたとしても、俺は何も言わない。
…寧ろあいつのことだ、気付いて利用するかもな。

俺を勝利に導く為に。
自分の勝利の為に。

俺はもう負けねぇ。
あいつにも、だ。
絶対に負けない。

俺が産まれた日。
俺の傍には、確かにあいつが居た。

それだけで充分だ。





2002.10.01
2007.08.11