もが、キミにしてる
鳳長太郎の場合

いつも追い掛けていた後ろ姿。
一生懸命な貴方の姿。

次第に見るのが辛くなってた・・・・。

ずっと憧れてたんです。
先輩たちの後ろ姿に。
弱肉強食の氷帝テニス部でレギュラーを保持する実力。
その裏に見え隠れする本音と弱音。

そんな先輩たちの姿を、俺は見て来ました。

滝先輩とのダブルスを解消した時、宍戸先輩は言ったんです。
そっぽを向いて、傷だけらけで…悪かったな、って。

その時の宍戸先輩の顔と声が、今でも忘れられない。
宍戸先輩の特訓に付き合うことを決めた時点で
俺の心は決まってしまったのかも知れない。

こんなにも簡単に人の心は変わるなんて
想像出来なかったんです。
俺の心は…
滝先輩よりも宍戸先輩を強く望んでいる。

あんなに好きだと思っていた滝先輩。
その滝先輩のレギュラー落ちを悲しむよりも
宍戸先輩のレギュラー復帰を喜んでしまった。

すみません、滝先輩。
ごめんなさい…醜い俺を許して下さい。

滝先輩の髪より宍戸さんの髪が好きなんです。
その髪を切ってしまった時…俺はあの人に恋をした。

宍戸さんは強いんです。
本当に心が強くて綺麗なんです。
いつも前だけを見据えている。
そんな宍戸さんの背中を、俺が支えたいんです。

例え、宍戸さんが俺を見ていなくても。

宍戸さんには思っている相手が居る。
それは知っていたし、その相手も知っている。
それでも俺は…宍戸さんを守りたい。
あの人の傷や痛みを和らげたい。
それが今の俺の、思いです。

俺の思いに答えなくていいんです。
ただ、宍戸んさの一番近くに居させて下さい。

……駄目、ですか?

◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆

一つの恋に終止符が。
それでもリレーは続いてく。

彼は彼の気持ちに気付きつつも、彼を本気で求めない。
彼を想う気持ちはある筈なのに・・・。

綺麗なものに憧れる。
純粋な心。

彼もまた、純粋。
純粋に彼を思い彼を慕う。
穢れ無き思いを段々と侵食する。
思いが大きい程に浸みは広がってゆく。
それは嫉妬と言う名の浸み。

気付かない彼が悪いのか。
気付いて無視する彼が悪いのか。

誰にも分からない。

ただ言えるのは、誰もが皆、同じ思いを抱えてる。
それだけだ。






2002.09.13
2007.08.11