誰もが皆、キミに恋してる |
向日岳人の場合 |
いつも一緒に居るのが当たり前だと思ってた。 それがいつもの日常、俺の日常だし。 けど、一緒に居る時間が長ければ長い程・・・・・。 ダブルスを組む様になってから一緒に居ることが当然になった。 いつでも呼吸が合わせられる様に、って。 テニスでも日常生活でも、侑士が俺をサポートしてくれる。 何でも助けの手を伸ばしてくれた。 俺はそれにいつも甘えて、直ぐに侑士を頼っちまう。 そんな侑士にも頼れないことが一つだけあったりする。 それが恋愛について。 流石に恋愛の相談は出来なぇって! だって俺が好きなのは…好きなのは侑士だから。 好きな相手に恋愛相談して自爆する程、俺だって馬鹿じゃねぇし。 そんなことが出来る奴が居たら聞いてみたいね。 どんなの気持ちなのか、ってさ。 言ってみそ。 聞いてやっから。 侑士にとって俺って何だ? テニスの相棒?(これは当然、思ってんだろ) 親友?(これは微妙。侑士が俺を頼ることすくねーし) 学友?(流石にこれだっら泣ける!) 世話の掛かる弟?(………微妙だ…) 聞いてみてーけど、聞けない。 侑士がどれを選んでも俺は納得出来ないし。 だって俺は侑士が好きだから。 くそくそっ! 侑士は俺の気持ちに気付いてもくれない。 や、気付いてたとしても…あいつはきっと、スルーする。 侑士にとって俺はそう言う対象にもならねーから。 侑士はいつも、跡部を見てるから。 …ん? そう言う対象って何だ? 俺は侑士に何を求めてんだ? 俺は侑士が好きだ。 だから侑士にも俺を好きになって欲しい、俺を見て欲しい。 「俺のこと、好きか?」 侑士のことだ、こう聞けば絶対にこう言う。 「好きやで?」 その疑問系は何だよ! 俺はそれじゃあ満足出来ない。 侑士の言う好きは友達の好き、ラブじゃなくライク。 じゃあ、俺の好きは何だ? 俺が侑士を思うこの好きは、何? 友達の好き? 家族の好き? 恋人の好き? 好きにも種類が沢山あって、訳がわからねーよ! けど…俺の好きは恋人の好き。 ラブの好きだ、と思う…。 こんなに俺は侑士が好きなのに。 バカ侑士! 気付いてるのに、気づかないフリをするのは卑怯だ。 俺なら侑士をずっと見てる、ずっと好きでいる。 でもそれは叶わない…。 叶わなくても侑士に一番近いのは俺だ。 例え恋人じゃなくても。 俺が一番、侑士に近い場所を独占してる。 それに変わりはねーし。 けど、そのうち…。 いつかそのうち、侑士に言われたい。 ラブの言葉を囁かれたい。 それまでは、この居心地がいい場所に居よう。 それくらいは…いいよな? ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ 夕暮れのコートに向日岳人の姿。 彼の小さくも大きい背中を瞳で追い掛ける人物。 彼もまた、自分に向けられる想いに気付かない。 向日は忍足に恋してる。 忍足侑士はその想いに気付きながらも、素知らぬフリ。 報われない想いは恋の数だけ存在する。 向日もまた、報われない恋心を抱き日々を過ごす。 その彼に恋心を抱く人物もまた、報われない? |