君よ、いつまでも 咲き誇る花であれ |
綺麗になったと、正直にそう思う エスカレータに乗っかって 氷帝学園高等部へと進学を果たしたのが つい先日の出来事の様に思えるが 実際には二年半の月日が経っている この時期ともなれば、進路について悩まされる時期だが 俺は進路よりも大いに悩まされている事がひとつある それは恋人であるアイツについてだ ウチの学園で『高嶺の花』と呼ばれる存在 念願の恋人同士になったとは言え アイツ…はまだこの関係に慣れねぇのか ぎこちなさが時折、漂う 俺に触れられる事は中学の頃からの免疫か 僅かな抵抗をするが、それも頬を染めてたら意味もねぇ 可愛くて可愛くて仕方が無いアイツを 俺は毎日、この腕に抱き締める 抱き締めるが… らしくもなく不安にもなる 「…お前、綺麗になったな」 「はい?突然、何言ってるんです跡部くんは」 夏が終わり秋へと突入したある日 俺はいつもの如くの肩に手を廻しランチを取っていた 隣には当然、が居て、当然の様に居る忍足…とその仲間たち 忍足はには協力的な様だが 俺様に取っては邪魔者以外の何でもねぇ 忍足ととの間に何かあったらしいが… 今もコイツは俺の隣に居る だから何も問い質さずに居てやってるが 邪魔で仕方ねぇんだよ 自然と目が鋭くなるのを自覚するが それを正す気もない 俺の視線に気付いた忍足が苦笑し漸く退散した頃 が昼食を食べ終え、俺の制服を引っ張る 「跡部くん、跡部くん」 「なんだよ」 「腕、邪魔なんですけど…」 「却下だ」 「う…。ですよね、そうですよね」 この二年半で伸びた髪が俺の頬を擽る は溜息を吐き出し不服そうな顔をしてやがるが 俺の胸に頭を預ける様に寄り掛かって来た 「珍しいこともあるもんだ」 「なにがですか。 跡部くんが離してくれないから、楽な姿勢を取ってるだけですよーだ」 息を、呑んだ。 綺麗になったとそう、思う 実際、高校に入ってからコイツはもてる様になった 二年になる頃には影で『高嶺の花』と呼ばれる様にもなった 今は跡部景吾の恋人だから手が出せない そんな意味で『高嶺の花』と呼ばれてるらしいが 幼さの抜けたの笑顔に…目を奪われた 「…跡部くん?」 「ッ…」 「え、なに、どうしたんですか?! ちょ、顔、赤いですよ?」 赤くなったらしい顔を隠す為にを抱き締める 慌てた声が更に聞こえたが、無視だ無視 中学時代 こう抱き締めても背中に廻る事が無かった手が 今は俺の背中に戸惑いつつも廻る 「なぁ、」 「はい?」 「俺が好きか?」 「…………………………。…好き、ですよ」 たっぷりと間が開けられた返答と 背に廻される腕、赤く染まる耳 全てが愛おしくて、を抱き締める腕を強めた 高嶺の花よ いつまでも、俺の花であれ |
2007.10.02